鮫島は叫び、ニューナンブの引き金を絞った。間野の体が個室の壁に叩きつけられた。が、倒れることはなく、鬼のような形相で間野は叫んだ。
「まだだっ」
マカロフが立ちすくんでいる香田を狙った。鮫島はさらに二度、引き金を絞った。ドン、ドン、という銃声とともに、間野の体が揺れ、壁にもたれかかるように倒れこむと、ずるずると尻もちをついた。みひらいた目で鮫島を見ている。
大沢在昌、『狼花、新宿鮫9』、光文社、2006年、548ページ
「ずっと考えていたんです」
鮫島はいった。
「何を、だね」
「間野は、本気で香田を殺すつもりだったのでしょうか」
「他に何がある? 鈴原を射殺し、沼尻も撃った。香田さんだけを助ける理由はない」
・・・
「私に撃たれるつもりだった。それは確かです」
長い沈黙ののち、桃井はいった。
「君は、そう感じたのか」
「はい」
前掲書、554ページ
間野が死ぬつもりであったと感じたのには、撃ち合いの時の間野の言葉「まだだっ」が鍵のように思いました。目的が果たせていないのでまだだといったのでしょうけれども、その目的というのが間野が殺そうとしている人物を殺すということではなく、自分自身が殺されるということだったということでしょう。
「まだだっ」ということばの深さがあります。
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