堀はホタルを促した。
「おっ母がさ、晩飯の仕度の手伝いをしてもらいたがっているんだ」
「はい」
ホタルはいって、立ちあがった。
「ジャガイモの皮むきさ、やったことあるか」
いいながら堀はちらりと私を見た。私は無言で見返した。堀の目は、もう大丈夫だ、といっていた。あとはすべて自分に任せろ、と伝えていた。私は無言で頷いた。
大沢在昌、『雪蛍』、講談社文庫、1999年3月15日発行、534ページ。
人間はここというときに無言で見返したり、無言で頷いたりします。この無言の会話、あるいは対話がふさわしくできる人生を歩みたいと思います。
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