いろんなことがあったみたいなんです

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「・・・ともかく、こいついろんなことがあったみたいなんです。俺も、みんなもいろんなことがあったよね。だから、ひとつお願いします。ちょっとの間だけ、目をつむってやって下さい」

中島吾市はぺこりと頭を下げ、ターニャの頭を押さえて、乗組員たちに向けて下げさせた。

森田船長が拍手をすると、なごやかな喝采が湧き起こった。

浅田次郎、『シェエラザード』、講談社文庫、2002年12月15日発行、上、237ページf

弥勒丸の航行の目的が見えない中でひとりの白系ロシア人少女ターニャを助けるという目的を見いだすことになりました。ここを読んでいたときが丁度京都の教会の話し合いに参加すべくJRで京都駅から桂川駅に向かう途中でした。不覚にも涙が出てしまいました。人が人を愛すること、大事にしようとすることに涙が出ます。涙腺が弱くなったのでしょうか。

久しぶりにもう一度読んでみたいと思った小説でした。

同じく浅田次郎の小説で戦争を題材にしたものとしてネットなどで紹介されていた『日輪の遺産』を借りようとしたところ大津市の図書館ではすべて貸し出し中でした。新刊でもないのに何でこんなに人気があるのかなと思いましたところ、現在映画化されて上映中だったのですね。ほとぼりが冷めた頃に読むことにしたいと思います。

 

律子は足を速めた。一歩でも会社から遠ざかりたかった。振り返ってはならない。もし十五年間の日々をなつかしんで振り向けば、まるで旧約聖書の恐怖譚のように、そのとたん石になってしまうような気がした。

前掲書、90ページ

すみません。話しの流れとはあまり関係ないのだと思いますから全くの揚げ足取りです。この旧約聖書の恐怖譚とは旧約聖書・創世記19章26節に書かれているロトの妻のことだと思いますが、よろしかったでしょうか。聖書によると「ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった」(新改訳)となっています。つまりロトの妻は塩の柱になってしまったのですね。石と塩の違い。同じようなものなのかもしれません。しかし塩というところにもやはり深い意味があるような気がします。

シェエラザード

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