検使、副使の両与力が前にすすみ出て、検使与力が懐から科書(とがしょ)を出した。登は思わず声を出した。
「お待ちください。死罪はなりませんぞ」
道場で相手を投げるときのような、すざまじい声が出た。
藤沢周平、『風雪の檻 獄医立花登手控え』、「処刑の日、」講談社、1981年3月16日発行、248ページ
無罪にもかかわらず妾殺しの罪で死刑囚となった大津屋助右衛門の死刑執行の朝。真犯人を突き止めた主人公立花登が刑の執行を待ってほしいと願います。与力たちはそれはできないとはねつけますが、登は食い下がります。柔道の使い手である登からそのときに出た声は「道場で相手を投げるときのような、すさまじい声」でした。
ひとりの人のいのちの重たさ。生死の分かれ道。滅びに向かうことの無念に思わずすさまじい声が出る。
失われたたましいを追い求める牧師もこうありたいものです。反省。
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