●奇跡の一年(3)

 一般的に着色料は染料系と顔料系に区分することができます。顔料系の絵具は大雑把にいうと様々な発色をする「顔料」を「溶媒(メディウム)」で溶かしたものです。溶媒には水、油、たまご、膠(にかわ)などがあり接着の働きを兼ねています。
 色のもととなる顔料には鉱物由来のもの、生物由来のものなど様々なものが利用されてきました。一般的には水や油には溶けないのでいろいろな工夫がされて絵具になっています。
 この顔料には安価なものから高価なものまでさまざまなものがあります。例えばコバルトブルーという色がありますが、このもととなる顔料は酸化コバルトなどから作られる比較的高価なものです。絵具を単品で買いに行くと分かるのですが、絵具は色によって値段が違い、このコバルトブルーは少し単価が高く設定されています。そこでたいていはその隣りに「コバルトブルーヒュー」あるいは「コバルトブルーチント」という比較的安価な絵の具が置いています。これは混色によって作られた代用品ということですが、使ってみると本物とは少し違うことがわかります。
 本物志向の人は少し高くても代用品を避けるのですが、近年この代用品も一つの色としてあえて使われることが多くなりました。代用品から出発したけれども、今は立派な地位を確保しているということでしょう。絵具箱に収まっているコバルトブルーヒューは、出自はどうであれ造られたままに胸を張って存在していればいいと語っているようです。


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