●『愛と自由のことば』より(17)

「私の中のすべてが、なまのエネルギーの波打つような震えを伴って揺れ動き、よみがえった」(M・L・キング)

 公民権運動の中心的な役割を果たしたキング牧師。逮捕と数多くの脅迫電話で緊張続きの一週間が終わった後のある大衆集会で話をした時の出来事。表面的には力と勇気に満ちた印象を与えようと努力しておられたのですが、この時のキング牧師の内実は意気消沈し恐怖に打ちのめされていたそうです。集会後、ひとりの黒人婦人ポーラおばさんが教会の前にやってきました。この婦人は貧乏に打ちひしがれ、教育もなかったけれども、驚くほど知的であったと牧師は語ります。彼女はキング牧師の内実を鋭く見抜いています。「あんたはどうかしているね。あんたは今夜は力強く話さなかったじゃありませんか」。
 内実の恐怖を隠そうとするキング牧師にさらに鋭く彼女は語ります。「私らが、あんたとどこまでも一緒にいてあげられるとはいやしません」それから、彼女の顔は輝くばかりになり、落ち着いた確信の言葉でさらに続けます。「けれど、よしんば私らがあんたと一緒でなくても神様があんたを見てくださるんだよ」と。この言葉を聞いたとたん「私の中のすべてが、なまのエネルギーの波打つような震えを伴って揺れ動き、よみがえった」とキング牧師は記しています。
 神さまが見ていてくださる、あるいは神さまがともにいてくださる。なんと力強いことでしょうか。恐れの中にあるとき、この信仰的事実さえ確かにされるならば、たいていのことは大丈夫なのです。


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