〔牧会ずいそう(選集)〕 ウミの上に薬

 傷ついた足を大事そうに抱え、赤く腫れ上がり真ん中は黄色くウミを持ち、今にもやぶれそうな膿んだ皮の上に、恐るおそる顔をしかめながら薬を塗る子供を見た。
「膿んだ上に薬を塗っても効き目が無いよ。ウミを絞り出して消毒してから、傷口に直接薬を塗らないと……」と言うと、その子は「そんなヒドイこと……」と泣き出してしまった。
 いたわりの言葉、やさしい言葉は良い。しかし、ウミの上を優しく撫でるだけでは癒す力がない。時にはムゴイようでもウミを絞り出し、皮を破って、傷口に直接届く言葉をかけねばならない。真に相手の癒しを求め、愛するなら……。
 愛は相手が泣くかどうかより、癒されるかどうか、救われるかどうかを問題にしている。


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