生きている。
絵が、生きている。
そのひと言こそが真理だった。この百年のあいだ、モダン・アートを見出し、モダン・アートに魅せられた幾千、幾万の人々の胸に宿ったひと言だったのだ。
そのひと言を胸に抱いて、織絵はニューヨークへと旅立った。
(原田マハ、『楽園のカンヴァス』、新潮社、2012年1月20日、290頁)
「絵が、生きている」と主人公・織絵の娘に語らせていることば。生きている絵と死んでいる絵。その違いがどこにあるのか。確かにその違いがあるのです。
けれど、ティムは、すでに覚悟を決めていた。このさき何が起ころうと、自分はルソーとともにある。どんな立場であっても、アートに寄り添い、作品を守り抜く人間でい続けようと。
(同、275頁)
美術は、それを制作という形で生み出す人びとと、それを評価し寄り添い守り抜く人びと、そしてさらにそれをさまざまな形によって鑑賞する人びとによって、「在る」のだと思います。