1517年10月31日付でマインツのアルブレヒトに送られたことが確認されているあの95ヶ条の提題は、なんと14日ほどの間にドイツ全土に伝えられた。「天使自身が飛脚であった」と言われたほどで、おそらく当時の人文主義者たちのネットワークを使ってまたたくまに広まったのだろう。
ルター自身が一番驚いている。彼は1518年3月5日付の書簡で次のように述べている。この提題が「広く読まれていることは、私が望んだことではありません。また私はそのようなことを意図したことはなかったのです。私はただこの町の人々とまたせいぜい近くの学者たちと議論し、その意見によってこれ〔つまり提題〕を取り下げるか、あるいはみなに認めてもらうかを判断しようと考えたのです。ところがこれが何度も印刷され、翻訳もされているのです。ですから私はこれを公にしたことを今後悔しています。・・・もしこれがここまで公になることがわかっていたなら、別な方法を選択するとか、もっと正確に書くとか、余計なことは書かなければよかったのです」。
深井智明、『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』、中央公論新社(中公新書)、2017年3月25日発行、49頁f
宗教改革500年ということで私たちの教会の属する団体も幾度かのセミナーを企画しています。学ぶということはとても大切なことです。今年発行された深井先生の良書『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』は、この時期すべての人が読むべき本ではないかと思います。この中にはプロテスタントに対する一般的な誤解に対していくつもの解決の糸口が記されています。
先日の礼拝説教の中で少し引用した箇所を上記に記しました。深井先生はルターについて以下のように記しておられます。
この名称の変遷からも確認できるように、ルターの改革は新しい宗教の立ち上げでもなければ、カトリックからの分裂でもなかった。ルター自身、カトリックであるという自覚のもとに、その生涯を歩んだ。1517年にヴィッテンベルクの教会の入り口で鳴り響いたハンマーの音によって西ヨーロッパのキリスト教は分裂し、プロテスタントが誕生したというストーリーは簡潔過ぎて、誤解を招く。1517年のルターの宗教改革と宗派としてのプロテスタントを直結させてはならない。
深井智明、『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』、中央公論新社(中公新書)、2017年3月25日発行、43頁
私たちの教会、私たちのキリスト教信仰はいったいどのような位置にあるのか、冷静に振り返っておくことは有意義なことでしょう。