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聖なる教会を目指して 16

 つづいて第3章の6のつづきを読みます。

第3章 ハラスメントを起こさないためにはどうしたらよいでしょうか?

6 ハラスメントかどうかわかりにくい グレーゾーンについて理解を深めましょう

 次にパワー・ハラスメントです。パワー・ハラスメントとは、「ある行為者が同じコミュニティーに属する者に対して、職務上の地位や権限などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与え、あるいは環境を悪化させること(厚生労働省)」と定義されます。
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(1)相手がハラスメントであると感じた、強制された、この2点だけではパワハラになりません。この点が、セクハラの認定要件と違う点です。
(2)基準は、業務の適正な範囲を超えていることです。業務上必要かつ適正な範囲内での指示、注意、指導は、相手が不満に感じてもパワハラとは認定されません。
(3)業務の適正な範囲とは何かが問題になります。適正な範囲とは、所属するコミュニティーが適正な範囲と認定しているもの、業務として理解されている事項、理念、伝統などです。ただし、行為者の言動、他者との関係性も検討されます。

 大切なのは、責任の立場にある者が常日ごろから方針を共有し、そのことで信頼関係を構築していることです。そういった信頼関係なしに、上司だからということで相手に優位性を誇示し、威圧的な態度を取れば、難しいかもしれません。

 明確に線を引くことは難しいのですが、教会的文脈でパワハラにならないために、以下のことに留意しておきましょう。グレーなことは避けるのが基本です。

(1)場を和ませるためという気持ちから、ある人をからかう言い方をした。これはかなりきわどい感じです。やらないほうが安全です。
(2)宗教的大義をつけたくなる行為全般。やりたくなったら、自分の心に向き合ってみましょう。宗教的大義をつけたいかどうか。
(3)牧師の指示に従わなかったことで、教会内の立ち位置に変更が加えられた。これはハラスメントと取られる可能性があります。
(4)牧師が、自分の人生の出来事などを自慢げに話し、周囲が嫌がっているのに気づかかない。やらないほうが安全です。
(5)仕事が忙しくて奉仕が難しい状況で、特別企画の奉仕をするように無理にお願いされた。奉仕の強要はよくありません。
(6)信徒が牧師に、24時間大切でのスタンバイを要求すること、育児のあり方にコメントすることなど。これはハラスメントになる可能性があります。

 セクハラとパワハラに関するグレーゾーンと判断基準について見てきました。セクハラは、「相手がセクハラ、あるいは不快に感じた」ことで、かなりセクハラと認定される可能性が高いのに対して、パワハラは、「相手がハラスメントであると感じた、何かを強制された」ことだけではパワハラに認定されないということです。パワハラの場合はもう少しいろいろな要素が考慮されます。
 しかし、いずれも、疑われることはしないのが大原則です。グレーでありながらわかってやり続けるのは誠実ではありません。

(インマヌエル綜合伝道団人権委員会、『聖なる教会を目指して―ハラスメントを起こさないためにはどうしたらよいか』、いのちのことば社、2020年7月20日発行、31ff頁)

 おそらく20年以上前に教会では、普通に行われていたことだったのではないか、と思われることです。


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