「ルカだけが私とともにいます。マルコを伴って、一緒に来てください。彼は私の務めのために役に立つからです。」
第二テモテ4・11
テモテに送られたパウロの手紙の最後に記されているこの一文は慰めに満ちています。
使徒15章36~41節に記されているパウロとバルナバの激しい議論、反目の原因となったマルコと呼ばれるヨハネの名前がここに記されています。「パンフィリアで一行から離れて働きに同行しなかった者」なぞ連れてはいかない、足手まといである、とパウロに言われたマルコ。そのマルコのことをここでパウロは「彼は私の務めのために役に立つ」と語っているのです。
おそらくあの激しい反目が起こった時から数十年の時を経て、マルコは変えられたのでしょう。役に立たないしもべから役に立つしもべへ。人間は変えられるものです。主にあるならば、かならず変えられていくのです。また私たちは変えられていくように主に招かれているのです。自分を、また誰かを、そのときの一点で評価する誘惑から私たちは自由にされています。
この一文を読んだテモテはどのような気持ちだったでしょう。テモテはこの激しい反目ののちにパウロに召された人です(使徒16章・3)。パウロ先生とバルナバ先生はいつも一緒に伝道の旅をしていたのに、このとき別れ別れで旅をし始めた。その直ぐあとに伝道者として召されたテモテ。あれはどういったことだったのですか、などと聞くこともできなかったでしょう。まさに封印されたことだったのだと思います。
その封印が解かれたのです。「彼は私の務めのために役に立つからです」。
ここまで自分に語られてきたパウロの言葉の一つひとつが、すべて自分が新しくされることを願っての愛の言葉であったと実感したのではないか。あのマルコ先生のように、私も変えられることを期待されているのだ、と。