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思想と文化と芸術の力

闘うべき相手は政府でもファシズムでもなく、戦争、暴力、憎悪である。武器を持たず、思想と文化と芸術の力、そして人々の結束で、それら負の存在と闘う。

それこそが、私たちに真の勝利と自由をもたらすのだ。

原田マハ、『暗幕のゲルニカ』、新潮社、2016年3月25日、322頁

コロナ禍のなかで、目に見えないものとの戦いを強いられる不安があります。手洗い、消毒、ソーシャルディスタンス、などなど、守れば守るほど、それが守られていない場面に、不安、恐れ、怒りが生れます。

ウィルスとの闘いではありますが、それが具体的な戦いの場面では間違った敵との戦いになってしまっているのではないか、と思えることもあるようです。不安、恐れ、怒りは人間としての当然の感情ですが、それらに振り回されて、本来の敵を見誤ってしまうのです。

さてこのところ原田マハの本を読みました。あるテレビ番組でコロナ禍のパリでのようすをこの作家がお話しされていたのにこころ惹かれたことからだったと思います。まず『楽園のカンヴァス』。これはほぼ一気読みの状態でしたが、それがもったいなくて行きつ戻りつしながら読みました。ななめ読みなどもったいなくてできませんでした。

それにつづいて、読んだのが『暗幕のゲルニカ』です。

いずれの作品も著名な画家の生涯とその作品にまつわりつつ、現代のキュレーターの生きざまがテーマでした。

絵さえ描ければいいと願って大学に進学したのですが、結局のところ、そんなに熱心に画業に励んだわけでもなく、卒業後は高校と中学で美術教師としてのつたない歩みをしました。が、結局、牧師になって30年が経ちました。ここしばらくひょんなことで、ほんの数時間ですが、中学の美術教室に通わせていただくようになり、なつかしい絵の具の香りに囲まれる瞬間を子どもたちや他の美術の先生と楽しんでいます。

この本を通してあらためて、思想、文化、芸術の力を考えさせられました。


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