本当の楽しみと涙
2017年11月3日(金)

神を信じましょう。天空(そら)からも地の底からも、それからそれと、どこまでも、我々の知らざる力が出てくるではありませんか。
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尽きることも消え去ることもない無尽蔵な富に頼り、かつ「懼(おそ)るな小さき群よ、なんじらにみ国を賜うことはなんじらの父のみこころなり」という保証つきでしている仕事です。長い間かかっても、これが心に熟してくれば、人間は何のために生きているという呟(つぶや)きに対して、「おもしろいから生きている」と無造作に答え得るものになります。

この感謝すべき人間楽の立場から、この世の中の人間苦を見る時に、センチメンタリズムとは質のちがう、本当の涙が出て来ます。そうしてそれはまた本当の人間楽を知るものの避くべからざる人間苦です。そうしてこの苦とこの涙は、人間の進歩になくてはならない力また手引きです。あれが苦しい、これがいやだといって、あてもない楽しみを求めている人に、決しておもしろいことは来るものでなく、神の国とその義を求め、神を信じつつ我を忘れてあらゆる人間苦とよき戦いを戦うところに、あらゆる楽しさ、満ち足りる興味が湧き出してきます。

〔羽仁もと子〕

『愛と自由のことば』
大塚野百合、加藤常昭編
日本キリスト教団出版局、1972年12月15日初版発行
2011年6月20日第14版発行
337頁

「小さな群れよ。恐れることはありません。あなたがたの父である神は、喜んであなたがたに御国をお与えになるからです。」(ルカ12・32)

 人生は楽しいものです。その楽しさは何の苦しみもないということからくる楽しさではありません。真実に苦しみを知ることからくる楽しさです。真実に苦しみを知ることは人間にはできません。唯一知ってくださった方がおられます。それが十字架と復活のキリストです。このキリストにあって人間は初めて苦しみの何であるかを知ります。そうして真の人生の楽しさを知るものとなります。


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