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雫井脩介、『火の粉』 被害者意識からの脱却、健やかな加害者意識へ

「分かって下さい。被害者は私なんです。先生だけは分かって下さい。」

(558ページ)

雫井脩介、『火の粉』、幻冬舎文庫、2004年8月5日発行

殺人者・武内真伍の言葉です。加害者であるはずの武内の心の中にある思いは「被害者意識」だったということでしょうか。

使徒の働き2章36節に「あなたがたはキリストを十字架につけたのです」とペテロは語ります。そこにあるのはある意味で徹底的な加害者意識です。

朝日新聞2011年2月1日(火)の夕刊に掲載の「隔離の記憶4」に宿泊拒否された側の元ハンセン病患者の方々の代表の大田さんが、自分たちを拒否したホテルに対して、その廃業が決まると職を失うホテルの方々にカンパを寄せたということが書かれていました。記事によると「巻き込んでしまって申し訳ない」ということだったようです。被害者意識を持って当然の方々がむしろ加害者意識を持って対応しておられるということでしょう。

被害者意識は人の生き方を醜くします。逆に健やかな加害者意識は人の生き方を美しくします。

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